問題解決は「白」か「黒」かだけなのか!

メディアでは、連日福島第一原発関連報道がなされ、刻一刻と変わる状況に国民全員が息を呑んで見守っている。そんな中前回のコラムでお伝えしたように、政府要請という形で中部電力・浜岡原発が停止(一時的ということらしい)された。
世論調査によれば、約70%がそれを支持した。放射線物質飛散への恐怖(映画:チャイナシンドロームと同質)や原発近隣から避難された方たちの無念さを目の当たりにすれば無理からぬことであろう。が、反対という声が根強いことも事実だ。主に地域経済活動への影響と、電力の代替政策が不明瞭という二点である。こちらも一定の説得力は持ち合わせている。
個人はもちろん、企業でも賛否が二分していることも興味深い。それほどエネルギー問題が、水、食料と並んで重いし深いということだ。

日本語には「白黒をつける」とういう言葉がある。是か非かを決めることだ。今に限ったことではないが、震災後、特にそのような場面がより多くなったように思える。が、果たして、ことは白か黒かという二者択一のような単純なものなのだろうか。いつの時代でも、転換期には必ずある、人の英知への試練のようにも思えるのだ。

  • 原発政策に賛成か反対かは今国民にとって今一番の関心事と言っても過言ではない。

他にも大切なことがいくつかある。

  • 震災復興に際して、増税やむなしと、そりゃ違うという意見。
  • 菅首相が引き続き政権トップに就くことに賛成と反対。
  • TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に賛成と反対。
  • 速やかな地方分権への移行に賛成なのか反対なのか。
  • そして、日本では国策一歩手前(?)であるが、EV普及に賛成と反対の意見。

どうも「菅おろし」なる言葉までが吹き荒れるようになった。こんな時に総理を代えている場合かという見方と、こんな時だからこそ総理を代えにゃあかんという見方があるらしい。どちらにせよ一般国民にはあまり関係のないところでやられているようで。大事なことは、復旧、復興を伴った経済成長戦略なのに・・・・・。


ポスト菅のウワサも高い、玄葉光一郎国家戦略担当相兼政調会長。選挙区が福島ということもあり、今回の震災では人一倍心を痛めている。前原誠司・前外務相、枝野幸男・官房長官などと並ぶ民主党若手のホープと言われている。菅世代の筆者が言うのもなんだが、もう第一線には40代、50代に任せていいのではないか。


河野太郎衆議院議員。自民党の中堅的存在である論客。TV出演が多い理由は歯に衣着せぬ話しっぷりだからではないか。おじいちゃんもお父さんも自民党の中枢にいた(お父さんの洋平氏は一度出て新自由クラブを作ったが)にも関わらず、自民党らしくないところに好感が持てる。自民党SC内閣府行政改革、公務員制度改革担当という肩書きは伊達ではない。


江田憲司衆議院議員。旧通産省(現経産省)出身。橋本龍太郎総理時代には行革担当総理秘書官も経験し、同改革にまい進する。巧みな話術とともに、霞が関のウラとオモテに精通した数少ない本格派論客の一人。みんなの党幹事長を務める、というより代表の渡辺喜美氏との二人三脚でみんなの党を小党からキャスティングボートを握る党にまで押し上げた。

原発という国家の根幹を成すエネルギー問題は、賛否の前に、①原発は今後も推進する。②原発は一定の時間をかけて縮小し、再生可能エネルギーなどへとシフトしていく。③原発は廃止する。という、最低でも三つの選択肢からなるものではないかと思う。(玄葉光一郎・国家戦略担当大臣兼民主党政調会長の弁)
少なくても震災前までは国の方針としては①だった。どうやら最近の菅首相の発言を解読すると、②にしたいようにとれるが、5月18日の声明で、
『現在3年おきに決められているエネルギー基本計画の白紙からの見直しが必要であるということを国会でも申し上げてきた。現在の基本計画では2020年までに原子力エネルギーを電力の中で53%程度、再生エネルギーを20%程度という方向性が出されている。(中略)
風力や太陽、バイオマス、こういったものを中心とした自然エネルギーを推進する。さらには化石燃料などの利用の仕方においても省エネという形でCO2を削減することも多くの技術がある。そういうものを積極的に進めていく。
そして、もちろんそのプロセスの中では化石燃料も相当程度のウエートになるし、原子力については安全性を一層高める中での活用を考えていく必要があるだろうと考えている』、と、具体策も含め検討したい旨を語っている。
③という選択肢は、少なくても短期的にはきわめて困難であろうと推測するが、原発推進であるはずの自民党の河野太郎衆議院議員は、原発の在り方を問うと同時に、低コストとされてきた原発コストの検証にも言及している。二重三重の安全(危機管理)面は言うに及ばず、エネルギー政策の発送電分離や規制緩和策も含めた仕組みの再構築が求められていることだけは間違いない。

いつから与党民主党は「ムダを省いてから」を「省いて」しまったのだろう

次に「増税問題」。震災復旧・復興・刷新に膨大なお金が掛かることは誰でも理解している。だから復興財源に限定した歳入を増やしたい、したがって増税やむなし、というやや短絡的なロジック。これに対し一部の経済学者は、疲弊している時の増税は国家すら崩壊させる、悪魔の選択とする反対意見も少なくない。これって、ざっくり言えば増税に賛成か反対かだけではないか。
みんなの党幹事長の江田憲司衆議院議員が自身のブログの中で復興(震災対策)財源について注目すべきことを述べている。原文のまま記そう。
『そのための財源はあります。今年・来年度の予備費1.3兆円、こども手当等のバラマキ予算の削減3.6兆円に加え、みんなの党が常々主張してきた国債整理基金にある10兆円の溜り金「タンス預金」、労働保険特会にある資産負債差額6.5兆円のうち5兆円、あわせて20兆円はすぐにでも出せるのです。
メディアの人は、なぜ、この「国債整理基金への定率繰入れの中止」を取り上げないのでしょうか? 過去、現実に数回実施された手法であり、44兆円の借金を増やさないで、10兆円の財源がすぐに震災対策財源として生み出されるのです。
財務省や御用学者、評論家は「それは借金返済の原資だから将来へのつけ回しになる」と言いますが、その定率繰入れ10兆円自体が新規国債(将来への負担)で賄われているのですから、理由になりません。
今、経済が大打撃を受けています。にもかかわらず、この期に及んで「増税」をいう政党があります。(中略)しかし、増税したらどうなるか。こうした「国益」よりも「財政規律」しか考えない輩には即刻退場してもらいたいものです。阪神淡路の時も一切増税していないのです!』
なんという分かりやすさ。この財源はむろん恒久的なものではないが、まさに震災後は緊急時なのだから原資調達もスピードが第一。やはり、霞が関のウラオモテと手法を知り尽くしているのは官僚出身の政治家だけなのか。いや、江田議員自身が持つ士気の高さの問題であろう。これ、第三の選択肢としてぜひ実現(与党を説得)させてください。

EV周辺事業は国策事業に成り得る!

菅首相、TPP、地方分権は、いずれかの機会にするとして、我がテーマである「EV普及」のことである。少しだけだが、今回の原発問題の賛否とニュアンスが似ている部分がある。
比喩として申せば、今直ちに原発(内燃機関車両)から再生可能エネルギー(EVなどの次世代車両)への100%シフトは現実的ではない。
人それぞれ、様々な立場と意見があるのは当然だが、原発も内燃機関車両も、過去数十年に渡って日本の経済活動を支えてきた。が、必ずいずれかの時代に「どうも長い間お疲れ様」の時がくるであろう。大切なことは、そのタイミングと中身の作り方ではないだろうか。
原発で言えば、地震と津波による事故が原因で、一瞬にして「困った発電施設」と化して存在そのものにある種の疑問を突きつけられた。不可抗力とは言えないまでも、無作為の状況の中でただジリジリと衰退していくとしたら、計画停電よりもお粗末だ。

自動車の場合はどうか。先日、電気自動車普及協議会の「EVビジネス情報部会」に出席してきた。個人会員なので、そのようなオフィシャルな会合に出るのは初めてのことだった。会の中身に関しては割愛させていただくが、これだけははっきり言える。
とにかく列席企業(約40社)の士気の高さには敬服する。自動車関連の事業者であれば、今の流れをどう読み、今後どう対処していくか。非自動車関連であれば、EVコンバージョン、スマートグリッドなどの流れをどう掌握し、どこにビジネスチャンスを見出すか、である。

アメリカ、ドイツ、スウェーデンは、国策レベルで、特にEVインフラに力を注いでいる。日本は現時点で具体的な施策は決まっていないが、今回の震災を機にスマートグリッド(次世代送電網)を具体化させた復興(刷新)作りが急務であることが予測されている。つい最近、東芝によるスイスのスマートメーター大手であるランディス・ギア買収の動きもあったばかりだ。
原発を含めた電力エネルギー政策の再構築ばかりが注目されていることは否定しないが、もう一つの転換である、電気の上手な使い方のカギを握っているのは、蓄電技術も含めて電気自動車普及協議会会員などEV関連事業者と関係者なのである。

もはや、EVの普及に賛成か反対かという段階ではなく、どのように推移させていったら、世界に冠たる日本のモビリティ技術を標榜し、成長戦略に結び付けていけるかが何よりも大切な時期なのではないだろうか。