今こそ「自動車ジャーナリスト」の出番じゃないか!③

いま世界は自動車関連の未来予測に溢れている

WIRED(2018.01.25 THU 16:00)の「電気自動車は本当にクリーンなのか──EV普及の前に考えるべき4つの問い」という記事は、①EVの増加予測 ②バッテリー需要予測 ②EVに必要な電力予測 ④バッテリー製造に必要な天然資源の4点について検証している。実際どうなっていくかは分からないが、大きく4つの視点を立てた構成は的を射ている。

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WIREDはビジネス、ジャーナリズム、カルチャーなどに力点を置くメディアだが、構成上不可欠な調査、取材データがメディアでありながらシンクタンクに近い。読者にとって重要なのは正確な情報発信だから、発信元がメデイアであるかシンクタンクであるかは問題ではない。

さて自動車ジャーナリストだが、大別すると2種類のタイプがある。一つはどこにも属さない一匹狼型。独自の訴求テーマを持ち発信するタイプ。もう一つはフリーランスだが、自動車関係記者クラブに属するタイプ。前者の場合は独自の取材源を確立しなければならないが制約を受けにくいメリットは小さくない。後者であれば企業や行政機関などとのパイプが期待できる。つまりクラブとしてシンクタンク的機能を持つこともできるはずだが目線が自動車ハード中心の印象が強い。

EVに関しての未来予測記事を例にしたが、近年自動車を取り巻く環境、課題は根深さや複雑さを増している。技術的なものは比較的数値化しやすいが、例えば高齢者運転事故やあおり運転などの社会問題は本来ならば自動車ジャーナリストの独壇場ではないだろうか。にもかかわらず彼らからの発信をほとんど目にしない。一般にウケないとでも思っているのだろうか。

いま高齢者運転事故予防という名のもと、免許証自主返納促進や免許証更新時70~74歳は高齢者講習、75歳以上では認知機能検査などのルールが定められた。が、問題点がないわけでは決してない。自動車ジャーナリズムの世界自体にも高齢化の波が押し寄せている。だからこそ自らの経験則に基づいた発信が意味を持つのではないか。ここは己の恥をさらけ出すぐらいの潔さが求められるところだろう。

あおり運転による事故(事件もある)は、高齢者運転とはまったく異なる視点が求められる。日本では罰則強化などが強く叫ばれているようだが、それですべて解決するかは疑問だ。アメリカでは「アンガーマネジメント(怒りを予防し制御するための心理療法プログラム)」が古くから浸透しており、何から何まで司法や警察に委ねるのではなく、危険運転防止の心理療法が普通に行われている。その点日本はおくれているがアンガーマネジメントの協会があり、自動車ジャーナリストの経験や知見とのコラボで、怒りから発する事故や事件の未然予防に役立つようなことが発信できれば、それは小さな出来事では終わらないような気がするのだが・・・・。

 

※図はガソリン車禁止国が増えた場合のEV推定累計販売台数 縦軸の単位は100万台(出典:WIRED