EVEX(電気自動車開発技術展)2011、生活者目線のテーマを

10月12~14日にわたり、パシフィコ横浜で同展は開催された。昨年7月に行われた時の参加企業団体数は200に満たなかったが、2回目の今回は206の企業団体が参加し、EVや周辺技術への関心の高さがうかがえた。同時開催という形で「クリーン発電&スマートグリッドフェア2011」が併催されたのは、技術、インフラ面などで共通する部分も多く、むしろ当然だろうと思われた。

APEV(電気自動車普及協議会)メンバーとしての視点ではなく、ごく普通の人の目線でこの展示会をリポートさせてもらうとしたら、正直この展示会は何かが物足りない。なぜか。

  • 電気自動車を基本とした「技術展」であるのは当然として、やはりそこに今を感じる「テーマ」を掲げてほしい。例えば「EVがあるライフスタイル」みたいな、消費者目線のアプローチがあると、より消費者は理解しやすい。
  • となれば、出展者はそのテーマに沿ったディスプレイなり訴求方法を競うはず。ブースの大きさには値段があるが、アイデアには予算はあまり掛からない。
  • 自動車関係では「東京モーターショー」が歴史もあり、規模も大きい。なぜそこに多くの人を呼べるのか(最近は減少傾向にあるが)と言えば、まぎれもなく見たこともないコンセプトモデルも含めた様々なハードが展示されるからだ(コンパニオン目当てという「萌えな」意見も少なくないが)。EVの場合、ハードはもちろん大切だが、核心部分に「仕組みやインフラ」がある。その要点を一般にいい形で理解してもらうことが至難だからこそ、生活者目線に立った身近な発信テーマが重要となる。
  • つまり、EVEXはモーターショーと同一の趣向、規模の小さいモーターショーではいけないような気がするのだ。EVはある意味革命性すら帯びているわけだから、多少時間は掛かるだろうが、丁寧な「意義と意味」を説明する手続きを踏まなくてはならないだろう。だからこそ「機会と場」の吟味と中身が大切なのだ。
  • EVハードの色、カタチが重要には違いないが、消費者にとって最大の関心事は、EVによって生活の、「何が」「どのように」「いくらぐらいで」変わるのかを、可能な限りのエンターテインメント性をもって、さらに「持続可能社会」の重要性をやさしく説く「場」であることが展示会の生命線ではないだろうか。

忌憚なく思った印象は、偽りなくそういうことだ。何か苦言を呈したように主催者は思われるかもしれないが、EVの健全な普及と電気エネルギーのフェアな需給を願うことが信条ということで、何卒ご容赦願いたい。
それでは、主な展示アイテムをご紹介しよう。順不同、併催の「クリーン発電&スマートグリッドフェア2011」も含めてお伝えします。


TV朝日「報道ステーション」の富川アナ(写真左)。当日の同放送は「蓄電技術」に関してのリポートだった。左手前のクルマは大阪のEVベンチャー、TGMYが発表したばかりの「EV Himiko」。1充電で587キロも走ることで話題を呼んでいる。担当者に聞いてみた。「走行距離が長くできたポイントは?」⇒「バッテリーの量です」。「普通のクルマに搭載する予定は?」⇒「物理的には出来ますが、とにかくインパクトのあるクルマじゃないと目立たないでしょ!」。さすがに大阪である。

みちのくトレードが輸入するマイクロスポーツEV「シャープシューター」。VWをベースにしたサンドバギー「メイヤーズマンクス」を彷彿とさせるカッコ良さだ。見てのとおりの遊び心満載で、12.5kw(約17馬力)の出力ながら477kgの軽量ボディを生かし最高速度は80km/hをたたき出す。1充電での走行距離は約60km。オネダンは261万2400円(最大87万円の補助金あり)。こちらも素朴な質問をしてみた。「どうしてEVなのに5速ミッションなんですか?」⇒「EV用にミッションを作るとコストが高くなるので、既存のものを流用しました。実際には3速ホールドで難なく走ります」とのこと。

常盤産業の「デンバ50」(写真)など多くのEVスクーター、EVバイクが展示されていた。この市場は大手メーカーのヤマハ「EC-03」も好調で、テラモーターズも第三者割当増資を完了させるなど動きが活発となっている。今一番の注目ヴィークルにして普及が急加速している「電動乗り物」だ。

EVベンチャーの中心的存在であるシムドライブの先行開発車事業車両である「SIM-LEI」。あえてあまり見ることのない角度から撮ってみた。デザインも大きさもかなりの迫力があった。第1号事業は電気自動車ビジネスに参入する34機関からの賛同を受け製作されたもの。1充電300km以上走行を目標に、インホイールモーター技術などを駆使して完成させた。また同社の社長は電気自動車の第一人者である慶応義塾大学の清水教授であることはよく知られている。

ワンモーターEV駆動システム、ステアバイワイヤ操舵システム、インホイールモーターシステムなどの技術で今後のEVマーケットに大きな影響を与えるであろう会社がNTNだ。写真はタジマモーターコーポレーションと共同で開発したインホイールモーターシステムの電動コミューター。このシステムによって左右輪の駆動力を独立させることができ、平行移動やその場回転もできる。まさしく次世代超小型モビリティの未来を睨んだ最先端技術と言えるだろう。両社は磐田市のEV実証試験にも共同で参画している。

このクルマ、まぎれもなくSR311型フェアレディ(輸出仕様)である。いったい何のためなのかというと、超急速充電器メーカーであるJFEエンジニアリングのテスト用EV車両なのである。一見すると日本が誇るクラシックスポーツをEVにコンバートした(間違ってはいない)クルマの紹介に見えてしまうが、実は同社が開発した最新充電器「スーパーラピダス」の充電用デモカーなのである。この充電器、わずか3分で50%、8分あれば80%が充電可能という。その充電器よりもSR311の方が目立っていましたけれど、充電器は大切です、皆さん!

自分で運転はできませんが、EVの同乗体験コーナーもやっていました。こちらのMINI Eは即予約終了のようで、乗れた人はかなりツいていたと思います。もう1台シティ・カブリオレEV仕様もあったようです。こちらこそ相当レアなクルマなのですが、40代以前の人はまずご存じないでしょうなあ。

レンジエクステンダーEVの日本での草分けとなるスズキ・スイフトの同仕様車。現在実証試験が行われている真っ最中で、EV単独での走行は30キロにとどまるが、660ccの発電エンジンを使ったPHEVモードだと37.6km/ℓの燃費を記録する。個人的に同技術には興味があったので居合わせたスズキの担当者に質問してみた。「実証試験は順調ですか?」⇒「はい、まったく順調そのものです。むしろ何か問題が生じた方が、改良を加えられるから後々のためにはかえっていいのですがねえ・・・」。「この方式は、基本的に常時モーターで走り、エンジンは発電用のもの、という考え方でいいんですよね?」⇒「その通りです」。「ってことは、シボレー・ボルトと同じような構造と理解していいのですね?」⇒(ちょっと複雑な表情で)「はい、その通りです」。

かなり地味な写真であるが、実は隠れた注目ブースと見た。右側は早稲田大学の横山研究室、左側は電力ソリューションプロバイダーのVPECだ。どいうことかと言うと、前者は同大大学院の環境エネルギーの第一人者、横山隆一教授が中心となって「地球環境を考慮した電気エネルギー利用技術、環境負荷低減と制御技術、先端電力技術と国際情報発信」という壮大なテーマと取り組んでいるのだ。お隣のVPECという会社は実は初めて知ったのだが、簡単に言うと現状電力の仕組みの中でも、再生可能エネルギーを活用でき、かつ小規模からでもできる電気の地産地消を実現させるという。同社ではこれらを「エコネットワーク」と呼ぶそうだ。熱心に説明してくれた品のいいオジサンは、後で名刺をちゃんと見たら社長・永田 敏とあった。失礼しました!
実際にはクリーン発電&スマートグリッドフェアへの参加者の方が多く、各社最先端の技術を披露していたのだが、時間と当方の知見の関係でおろそかになってしまったことを深くお詫び申し上げます。