何かと話題の「飲料自販機」だが・・・

3月7日、つまり東日本大震災が勃発する4日前に興味深いプレスリリースがあった。タイトルは「ソフトバンクテレコムなど、飲料自販機を活用したEV用充電器普及事業、EVベンダー」である。文字通り、飲料自販機を使ったEVへの充電事業を後述する10社が参加して推し進めるという内容。
コトの良し悪し、賛否を論じるつもりは毛頭ない。が、これだけは思った。自動車関連事業者とは異なる業態の人たちの考えることは発想がダイナミックだなあ、と。そしてリアルにスピード感を感じたことも間違いない。

そして3月11日、東日本大震災という未曾有の地震と津波が被災地を襲い、少なくても震災後一週間の民放TVメディアは企業コマーシャル無しの被災者/被災地と福島第一原発報道に終始した。その期間何もかも止まったというより、被災地はもちろん、あらゆる地域、様々な立場の人が凍りつき、震撼したのだ。
被災地の悲惨さや福島第一原発の刻一刻変わる状況に、日本国民の誰もが息を呑んで見守ったことは言うまでもない。この間、禁句となった言葉が一つだけある。「想定外」という文言だ。その理由は申すまでもないでしょう。

たまたまこの時期に統一地方選挙の前半戦が告示され、東京都知事選挙もそのスケジュールに入っていた。結果は予想通り現役の石原慎太郎都知事の圧勝に終わったことはご承知のとおり。石原氏はいわゆる選挙運動は一切行わず、ひたすら政府のテンポの悪さを訴えていたが、その一環として電力不足の解決策を捉え、膨大な数の飲料自販機の電力使用頻度に対し強い懸念の意向を表明した。その後、その発言を受けるなどして大手飲料メーカーが具体的な節電対策を行ったことも周知のとおりだ。

エネルギーは、確保と同じくらい供給手段が大切

さて、その飲料自販機である。前述のリリースによると全国に約250万台設置されているそうだ。確かに膨大な数だ。そのことは同時に全国どこにでも設置されている機材ということでもある。前述の普及事業は、そこに着目して発想されたことは間違いないだろう。事業内容はソフトバンクテレコムのリリースによると、

  1. 飲料自販機とEV用充電器を同時に設置することで、EV用充電器本体と工事費の設置者費用負担の無料化を実現。
  2. 飲料自販機とEV用充電器は、それぞれ施設内の離れた場所に設置が可能。例えば、飲料自販機は、施設内の3階の飲料自販機コーナーに設置し、EV用充電器は地下駐車場に設置という実務的な設置が行える。
  3. 適時、飲料補充に施設・企業を訪れる飲料オペレーターが、飲料補充と同時にEV用充電器の稼働確認や周辺清掃の人的巡回サポートを無償で実施する。
  4. EV用充電器主要企業との連携により、付加価値の高い充電関連サービスや関連製品の展開を継続的に実施する。

となっている。目の付け所が鋭い、と思ったのは私だけだろうか。想像するに、自販機ゆえに課金に対する心配がないところもミソではないだろうか。

その参加10社の役割を記そう。

企業名 主な役割
ホーキング (提携飲料オペレーター全国約50社:47都道府県全域対応)
本事業展開をインキュベーターと共に開発、事業を主催。提携している飲料オペレーター組織を活用し、飲料自販機とEV用充電器セットを全国の施設・企業へ設置営業及び巡回サポートサービスを実施。
インキュベーター ホーキングとともに当事業を開発・共同主催。当事業展開の事業企画・運用及びEV充電ソリューションの企画開発、事業スキーム開発等を担当。
日本ユニシス EV用充電器の集中管理を行うための充電インフラシステムサービス「smart oasis®(スマートオアシス)」を提供。
ソフトバンクテレコム/ソフトバンクモバイル EV用充電器と充電インフラシステムサービス「smart oasis®(スマートオアシス)」を接続する通信サービスを提供。
ビーライト 全国100社以上の施工兼営業組織を活用した、「EV VENDER」の営業施工展開。
パナソニック電工 EV用充電器の開発製造と提供。
福西電機 利用者の識別認証が出来る「パ・チャ・ポ」の充電管理用通信ボード機能の提供。
内外電機 EV用充電器の開発製造と提供。
愛知電機 EV用充電器の開発製造と提供。

EVの普及に関して言えば、自動車本体よりもむしろ充電インフラ設備の方がインパクトは大きい。ガソリンスタンドが無ければエンジン車両が意味を成さないことと全く同じことだ。
EVの充電インフラは、高速道路サービスエリア、スーパー、コンビニ、地方自治庁舎、ホテルなど着々と進んでいることは間違いないが、設置個所の数を劇的に加速させるアイデアがいろいろあって不都合なことはない。

今、静岡県・浜岡原発の停止が決まり、依存型エネルギーから創造型エネルギーへのシフトが避けられないことすら暗示しているようにも見える。
生活者にも企業にも主要なエネルギー源である電気を重宝する社会に今後も変わりはないだろうが、使い方の知恵や創造力が飛躍的に求められる時代になったことだけは確かだ。「あまり考えずに電気を使う」から「しっかり考えて電気を使いこなす」が、蓄電を含めた電気の周辺環境を大きく変えることになるだろう。